「A型作業所」。一般就労している方にとって、なじみの薄い言葉でしょう。
しかし障害者で福祉サービスを受けている人、一般就労はまだ難しいけれど、短時間でなら働くことができる、という人にとって大事な「職場」です。
今回はA型作業所で働きたい方に、A型作業所で働くまでの流れとA型作業所で働くことができる人、また私がA型作業所に入所して働くまでの体験談も紹介します。
A型作業所で働きたい! 何から始めたらいいの?
私も「A型作業所」という言葉は障害者手帳をもらって仕事探しをしたとき、初めて知った言葉です。
しかも何もわからないまま見学に飛びこんでいったのですから、自分でも呆れます。
ここでは、A型作業所で働くにあたって、やることを7つ紹介します。
中には自分でしなくても良い作業もありますが、ひと通り目を通してください。
① 病院に相談
いきなりA型作業所で働いて、体調が悪化したら目も当てられません。
症状がひどくなったら、せっかく落ち着いていた体調がまた元に戻り、寛解も遅くなってしまうでしょう。
A型作業所で働くと決めたら、まずは主治医に相談して、働いていいかどうか、どのくらいの時間帯なら大丈夫か、しっかりと聞いたうえで準備を始めましょう。
② A型作業所を探す
医師からの許可が下りたら、本格的にA型作業所の仕事を探していきましょう。
求人の探し方は、ハローワークの障害者専用窓口、転職エージェント、インターネットなどで探します。
「ここで働きたい」と決めたら、次のステップに進みますが、その前に見学や体験をさせてくれるA型作業所もあります。
2~3時間ほど体験させてくれるので、「ここで働けるか」と判断することもできます。
この場合、ハローワークの方が同行してもらえることもありますので、「一人で行くのはちょっと……」という人は、相談してみてください。
③ 市町村の窓口で申請
A型作業所で働くと決めたら、市役所の障害福祉課で「就労継続支援A型作業所で働きたい」と相談しましょう。
こちらは仕事を探している最中に申請しても問題ありません。
サービス利用のための申し込みをします。
④ 生活状況の聞き取り
利用申請を行った際に、市役所の障害担当者が現状の聞き取り調査を行います。
現在の病状や精神状態、どのような支援が必要かを聞き取り、具体的なサービス内容を検討しています。
⑤ 特定相談支援事業者の訪問調査、サービス等利用計画書の提出
実際にA型事業所で働く際、外部からの支援サービスも必要です。
支援サービスの方は、障害の程度やどのような支援を行うのか、障害者の課題などを聞き取り、障害者にとって必要と思われる支援計画を立てます。
ちなみにこの支援事業者は、入社1ヵ月、3ヵ月、半年、1年、それ以降半年ごとに会社訪問をして、現状や悩みがないか、聞き取り調査をしてもらえます。
また計画書を市役所に提出するのですが、家族や自分で作成できない場合は、支援事業者の方に作ってもらうこともできます。
というか、そういう人がほとんどだと思います。
⑥ 受給者証の発行
市町村に必要書類を提出し、しばらくすると「障害福祉サービス等利用者受給者証」が交付されます。
大切な証明書なので、必ず失くさないようにしましょう。
ちなみにこの受給者証、交付までにかなり時間がかかることを知っておいてください。
⑦ 作業所との雇用契約
受給者証が交付されたら、晴れてA型作業所との雇用契約が結ばれます。
申請から受給者証発効まで平均1ヵ月程度、と言われましたが、私は3ヵ月待ちました。
人によって違うのかもしれないので、市役所の職員に確認を取るようにしましょう。
A型作業所で働くことができる人は?
「A型作業所で働く!」と決めても、「無理ですよ」と言われることもあります。
症状が快癒していない、医師の判断で、まだ就労は難しいと判断されたら就業はできません。
ではどういった人たちが、A型作業所で働くことができるのか、紹介します。
- 就労移行支援を利用したが、就労に至らなかった人
就労移行支援は福祉サービスの一環で、一般企業への就職を目指す方を対象にしています。
就職に必要なスキル向上、知識などの習得を行います。
しかしご縁に恵まれず、なかなか採用に至らないケースもあります。
その場合は、一般就労、または障害者雇用への前段階としてA型作業所で働くという手段があります。
A型作業所によっては将来のためのスキルを身につけることができる場所もありますし、毎日通所するので生活習慣の乱れが少なくなるといったメリットもあります。
サービス管理責任者や指導員などもいるので、悩みがあっても相談しやすい環境です。
- 特別支援学校を卒業したが、企業との雇用に繋がらなかった人
特別支援学校を卒業した後、就職に至った人は約3割。
最近は国が障害者の就労に力を入れているとはいえ、決して高い数字ではありません。
頑張っても採用されなかった人は、A型作業所で働くことができます。
A型作業所の仕事は実に様々で接客業からひとり黙々と作業をする仕事まで。
「この仕事、興味がある!」と思ったら思い切って飛びこんでみましょう。
- 就労経験はあるが、現在は一般就労ができない人
以前は就労していたが、現在は求職、または無職の方も、A型作業所を利用できます。
職場を病気退職する理由で多いのが、障害の発生はもとより、状況が悪くなった、体調不良が原因だそうです。
一番つらい時期を越えて、「短時間から始めたい」という人も、A型作業所は良い場所です。
皆さん障害を持っているので、お互いに支え合うようなほんわかした雰囲気の職場が多いので、楽しんで働けるのではないでしょうか。
【体験談】私のA型作業所就労まで
最後に私がA型作業所で働くまでの道のりを紹介します。
当時A型作業所という言葉も分からなかった私は、ハローワークの障害者専用パソコンで前職の仕事を見つけました。
「webライター募集」だったので、今までのスキルを活かせる! ということで即応募しました。
作業所に連絡をすると、ハローワークから歩いて5分程度の場所にあるので、時間があるなら今すぐでも見学に来て構いませんと言われました。
もちろんすぐに行って、中の様子や仕事内容などを教えてもらい、「ぜひここで働きたいです」と社長にアピールしました。
そこで初めて「A型作業所についてどれくらい知っていますか?」と聞かれました。
え? A型作業所って求人票には書いていたけれど、何か違うの? オロオロした私を見た社長は、A型作業所について、この後すること、必要なことを教えてくださいました。
早速市役所に行って手続きをしたのですが、プリントを渡され「この中から特定相談支援事業に連絡を取って契約を結んでください」と言われました。
自分でするんですか!? と訊ねても、ハイそうです、と。後から事業所の方に聞いたのですが、自分で支援事業所を探したという人に会ったことがありません。
あの職員さんは面倒だったから、私に仕事を押し付けたのではないか、と今でも思っています。
その後3件ほど事業所に連絡をしたのですが、どこも満員で受け付けられない、と断られる日々。
働きたいのに働けないってどういうこと!? と、ずいぶん憤っていました。
4件目にして、ようやく担当してくれる事業所が見つかり、受給者証の手続きをしました。
上記でも書きましたが、受給者証の交付が下りたのは3ヵ月後。
希望したA型作業所が待っていてくれたから良かったのですが、9月の始めに面接をして、仕事始めは12月というものすごいスパンの長い就職活動でした。
福祉サービスなどは分からないことが多いので、親切な職員さんに当たらないと非常に苦労すると思った体験でした。
まとめ
初心者がA型作業所で働くための7つのステップと、A型作業所を利用できる人、また最後に私のA型作業所で働くに至った東奔西走について紹介しました。
働くことが出来なかった人が、短時間でも仕事ができるようになったということは、本人も周囲の人間にとっても喜ばしいことです。
決して無理をせず、マイペースで仕事をしてください。